D1の「信号機ルール」は、何を入れてよいかを決める最初の一歩です。会社として使い続けるには、その先の「誰が決めるのか」「事故が起きたらどうするのか」「どう見直すのか」も要ります。この資料は、従業員が数名〜数十名の会社が、A4で2枚と台帳1枚から始められる形にしました(2026年10月時点)。
1. 3つの層で考える
| 層 | 決めること | 分量の目安 |
|---|---|---|
| ① 方針 | なぜAIを使うのか。何を大切にするのか(お客様の信頼、社員の働き方など)。社長の言葉で | 数行 |
| ② ガイドライン | 現場のルール。何を入れてよいか、誰が確認するか、してはいけないこと | A4 1枚(次の2章) |
| ③ ガバナンス | 運用の仕組み。誰が決め、誰が見て、事故のときにどう動き、どう直すか | A4 1枚+台帳(3章・6章) |
最初から完璧を目指しません。A4で2枚+台帳1枚で始めて、半年ごとに直すのが現実的です。ルールが先で、道具が後。
2. 利用ガイドライン:A4 1枚のひな形
〔 〕を自社の言葉で埋めてください。
| 項目 | 書くこと(例) |
|---|---|
| 1. 目的 | 〔お客様への提案の質を上げ、事務を減らすため〕にAIを使う。 |
| 2. 対象 | 〔社員・パート・協力会社〕が業務で使うすべてのAI。 |
| 3. 使ってよいサービス | 許可リストに載せたものだけ。個人の無料アカウントで業務をしない(個人のスマホでも同じ)。 |
| 4. 入れてよい情報・いけない情報 | 信号機ルール(D1)に従う。青=入れてよい/黄=条件つき/赤=入れない。 |
| 5. 学習の設定 | 入力が学習に使われる設定を、許可リストの各サービスでオフにする。確認するのは〔AI窓口〕。 |
| 6. 出力の確認 | AIの回答は必ず人が確認する。数字・法律・工法・価格は出典を開いて確かめる。お客様に出す前に〔上長〕が見る。 |
| 7. 著作権・他者の権利 | 他社の文章・画像・写真をそのまま入れて加工しない。AIが作った画像や文章が既存のものに似ていないか確認してから使う。 |
| 8. 個人情報 | お客様の個人情報は、赤として扱う。入れる必要があるときは〔AI窓口〕に相談し、利用目的の範囲内か、学習に使われない設定かを確認してから。 |
| 9. 外に出る操作は人が承認 | メール送信・公開・発注・支払いは、AIに任せきりにしない。最後は人が押す。 |
| 10. 困ったとき | 入れてしまった/漏れたかもしれない、はすぐ〔AI窓口〕へ。早く言った人を責めない。 |
| 11. 見直し | 〔半年〕ごと、またはサービスの料金・規約が変わったとき。 |
3. ガバナンス:役割・手順・記録
役割
| 役割 | やること |
|---|---|
| 経営者 | 方針を決める。ルールを承認する。最終責任を持つ |
| AI窓口(担当1名+代理1名) | 許可リストと台帳の管理/設定の確認/相談の受付/年2回の見直し/事故のときの連絡の中心 |
| 利用者 | ルールを守る。迷ったら聞く。事故は早く報告する |
| 協力会社 | AIに入れてよい情報の範囲を、契約や覚書で合わせる(現場写真・図面・見積など) |
新しいツールを使いたいときの5つの確認
- 誰が運営しているか(会社名・所在地・連絡先が確認できるか)
- 入力データの扱い(学習に使われるか。使われない設定があるか。A2参照)
- 契約の形(個人か、組織か。退会したときデータはどうなるか)
- 料金の上限(使った分だけ請求される形のときは、上限を決める)
- 誰が使うか(全員か、担当者だけか)
確認が済んだら許可リストに載せ、台帳に1行足します(6章)。
事故が起きたときの手順
- 止める:その場の入力をやめる。会話や共有を削除できるなら削除する(削除しても相手側に残る場合があります)。
- AI窓口へ連絡:何を、どのサービスに、いつ入れたかを伝える。
- 影響を確認:個人情報・取引先の情報・社外秘が含まれていたか。
- 必要な連絡:お客様・取引先への連絡が要るか。個人情報の場合は、専門家や関係機関への相談も検討する。
- 再発防止:ルールか設定か教育を直す。責める場ではなく、直す場にする。
教育と見直し
- 入社時と年1回:ルールの説明は10〜15分でよいので、実際の失敗例を使う。
- 半年ごと:許可リスト・台帳・ルールを見直す。無料・有料の条件や学習設定は、予告なく変わることがあります。
AIエージェントを使うときは、権限を絞る
AIエージェントは、自分で調べて、操作して、送信まで進められます。権限は必要な範囲だけにして、外に出る操作は人が承認し、操作の履歴を定期的に確認します。国の「AI事業者ガイドライン」も、エージェントについて、権限の適切な設定・人の判断の介在・操作履歴の確認といった考え方を整理しています(5章)。
4. 業種別の線引き例:建設・リフォーム業
D1の信号機ルールを、建設・リフォーム業に当てはめたたたき台です。自社の仕事に合わせて直してください。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 青 | 一般的な工法・設備・制度の質問、公開済みのホームページやチラシの文案、お客様がよく調べそうなことの下調べ(例:水回りの一般的な悩み) | 無料版でもOK |
| 黄 | 施主名・住所を伏せた現場の状況説明、見積の考え方(単価は伏せる)、社名・個人名を伏せた議事録、現場写真(個人や場所が特定されないよう処理したもの) | 許可リストのサービスで、学習オフを確認してから |
| 赤 | 施主の氏名・住所・電話・家族の情報、図面や現場写真で施主が特定できるもの、見積単価・原価・協力業者との取引条件、契約書の原本、従業員の個人情報 | 入れない(必要なら、AI窓口が条件を決めてから) |
現場写真の注意:表札・車のナンバー・人の顔・書類が写り込んでいないか、入れる前に確認します。
5. 公的な土台(この資料の根拠)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版):総務省・経済産業省、2026年3月31日公表。AIを使う側の事業者も対象。第1.2版では、AIエージェントについて、権限の適切な設定、人の判断の適切な介在、操作履歴の定期的な確認といった留意点が整理されています。経済産業省の検討会ページ
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起:個人情報保護委員会、2023年6月2日。個人情報を含む入力は、特定した利用目的の範囲内か確認し、事業者が入力データを機械学習に使わないことを確認する、という考え方が示されています。個人情報保護委員会(PDF)
- AIと著作権に関する考え方について:文化庁、2024年3月15日。生成物が既存の著作物に似ていないか(類似性)、既存の著作物に依拠していないか(依拠性)が、利用段階の判断の柱です。文化庁
- 生成AIの利用ガイドライン(ひな形):日本ディープラーニング協会(JDLA)、第1.1版(2023年10月)。条項のみ・簡易解説つき・画像編があり、無料でダウンロードできます。自社のガイドラインは、このひな形を土台にして、本資料の役割・手順・業種別の線引きを足すと早いです。JDLA 資料室
6. 台帳のひな形(A4 1枚)
| ツール | 用途 | プラン・契約 | 学習設定 | 使う人 | 確認日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〔例:Gemini(会社の契約)〕 | 〔文案づくり・調べもの〕 | 〔組織契約/有料〕 | 〔オフを確認〕 | 〔全員〕 | 〔 年 月 日〕 |
| 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 |
| 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 | 〔 〕 |
この資料は、自社のルール作りのたたき台として自由に使えます。PDF版をダウンロードして、自社の言葉に直してお使いください。